菅原健彦
菅原健彦

菅原健彦について

菅原健彦(すがわら たけひこ, 1962–2025)

1962年、東京に生まれる。多摩美術大学で日本画を学び、京都芸術大学教授として創作と教育の両輪を担いながら、日本画の新たな可能性を切り拓いてきた。

彼の作品は、自然そのものの呼吸を映し出す。千年を生きる神代桜との出会いを契機に、淡墨桜や臥龍の松、霧降の滝などを題材に、悠久の時を宿す自然像を描き続けた。

制作の根幹には、伝統と革新を往還する独自の方法がある。自ら調合した松煙墨に膠を加え、大胆に塗布し、乾燥の過程で生じる収縮とひび割れを画面に活かすことで、樹木の肌理や時間の痕跡を刻む。岩絵具は振り撒くように用い、葉の一本一本を描くのではなく、枝ぶりや塊の力強さを浮かび上がらせる。さらに、プラチナ箔や金泥、和紙を重ねることで、光と陰影が交錯し、画面は深い奥行きを獲得した。

1994年 五島記念文化賞新人賞、2004年 東山魁夷記念日経日本画大賞 大賞などを受賞。2012年にはパリで個展を開催し、以後もArt Paris、BRAFA、アートフェア東京など世界の舞台で作品を発表した。

2025年に逝去。しかし、彼が遺した作品は今もなお、生きる自然の息遣いを私たちに伝え続けている。

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