中野嘉之
中野嘉之

中野嘉之について

中野嘉之(1946–2023)京都に生まれ、多摩美術大学大学院で日本画を学んだ中野嘉之は、伝統に根ざしつつも独自の美意識を追求し続けた日本画家です。加山又造や横山操といった巨匠に師事し、その影響を受けつつも「豪快で自由な人柄」が作品に力強く表れました。

素材への深いこだわりにも知られ、水墨という範囲をも超えた豊かな表現を模索し続けました。その姿勢は、岩絵具や墨、紙への綿密な探求にまで及び、素材自体が作品の魂となったような表現を生み出しています。

その画業は数々の展覧会と受賞歴によって彩られます。1972年には新制作協会春季賞を受賞し、1975年には新作家賞を受賞。1992年のMOA岡田茂吉賞優秀賞、1994年の京都美術文化賞、2005年の文部科学大臣賞、2006年のMOA大賞など、評価は国内外に広がりました。

また、多摩美術大学での教育者としても長年にわたり活躍し、名誉教授として若い世代に大きな影響を与えました。芦屋や箱根など各地で個展を重ね、自然の空気と息づかいを感じさせる風景画や花鳥画を深化させ続けました。

その壮大で詩情豊かな作品たちは、見る者の心に静かな感動を届けるものです。「自然と対話し、素材に命を吹き込む画家」として、美術界に深い足跡を残しました。

取扱作品